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※ネタバレあり ハコヅメ 別章 アンボックス 7話感想

ハコヅメ アンボックス第7回

私は大好きな展開ですけれども、私が大好きという時点で絶望回だとお察しください。

前回、源さんに事件のこれからが託されたものの、大きな進展はみられない現在。捜査員にも地域住民にも、長引く事件に焦燥と不安が募る重苦しい状況です。
冒頭の捜査員の愚痴にもその焦りとやるせなさが表れています。丸2日山の中をただ歩き回るだけに終わる疲労と徒労感、おまけに世間の風当たりも強いのでは無理からぬことでしょう。

それにしても源さんはすごいですね。
ここで取り調べを任される刑事課長の絶対的な信頼はもちろんですが、正直、胃が切れそうな程のプレッシャーの中でも、取り調べの間だけは刑事の顔が全く崩れない。
そこを離れるといつものダメ人間代表クソ毛玉で、山田さんいじりながら酒飲んで愚痴こぼすんですけど、仕事の時だけはほんとにTHE刑事。遺伝子にKEIJI組み込まれてるのかな?っていうくらい対人戦闘力だけは激高です。


ちょっといつもよりイケメンに描かれているのもまたニクイですね。

 

そして警察は必死の捜査を連日続けるも、世間の悪意の刃は次々と襲い掛かる。
警察の努力を嘲笑うかのようなネット上での脅迫を行う愉快犯。
事件の結果のみを見て、無責任に酷評する一般市民。
それを小さな体で受け止め続けるカナさんに、さらに降りかかる身内への攻撃。


憔悴しきった顔……無理もないです

 

周囲すべてが敵にすら感じられるこの状況で、それでも職務を全うしようとするカナさんにとどめを刺したのが、やはり、過去の事件でしたね。

あの岩元さんの言葉にはあてこすりの様な悪意は全くないと思います。
自分の息子を失っているというのに、出てくる言葉は自戒とカナさんをいたわり幸せを願うもの。むしろこれ以上ない優しさです。
でも、これこそがカナさんの絶望に対する最後の一押しだったのではないかと思います。

コンプレックスを持つ人が自己嫌悪に陥っているときに優しい言葉をかけられるのって、救われることもありますが、ただただ辛くて仕方がないこともあります。
だって自分の周りの人たちの誰もが苦しんでいるときに、周りの人たちがみんな優しくて正しかったとしたら……悪いのは自分しかいないじゃないですか。

 

 


そして絶望のこのシーン。
あの人を食ったような、どこか達観したところのあるカナさんの、この後ろ姿。
脳裏に浮かぶのは、止められなかった男の凶行(その34 男と女と警察と)、虐待を受けていた少女(その87 憧れのロボコップ)、救えなかった被害者と、虐げられたその遺族………
後悔だけが走馬灯のように流れ、銃口が食い込むほど額に強く押し付けられたところで、いつもの調子で部屋に入ってきたのは山田さんでした。

 

もうほんっとに山田よくやった!としか言いようがないですよね。
なんだかんだ、詰めが甘くてちょろくていまいち使えないやつ扱いされながら、実は署内で一番トラブルを解決する能力が高い(主に身を呈して)山田さんが今期最大の手柄をあげてくれました!

 

最後のシーンはえ?これって?山田とカナさんが?なんてちょっとドキドキしたりもしましたが、ほんの一息つけたのもつかの間。残り3話。まだ回収されていない伏線がいくつもあります。
しかも、明らかに明るい話題ではないものも。

 

一読者としては幸せを望みたいのですが、どうしても暗い展開が好きな私としては、さらなる奈落も期待して、次回を待ちたいと思います。

 

あーっ!息が詰まった!
読んでいてこんなに緊張するお話は久々でした。
それにしても山田!よくやった!えらい!誰がなんといおうとえらい!
藤さんが頭なでなでして甘やかしてもおかしくないくらいえらいですよ山田さん……